特集:名品/巨匠?――日本美術史における軌範形成
日本美術史における規範形成を「擬制的」あるいは「流動的」なものとして見据えることによって、日本美術史という言説をめぐるさまざまな問題――たとえば、言説の政治性、価値観の多元性、歴史観の多様性――を議論の場に引き出す。(まとめ=岸 文和)
T――美術史/美学/歴史学
- 名作と巨匠の認知をめぐる認識の齟齬――「日本美術史」形成期(1870−1900)を中心に、ゴンス『日本美術』(1883)、アンダーソン『日本の絵画藝術』(1886)および『稿本日本帝国美術略記』(1900)をめぐって(稲賀繁美)
- 岡倉天心と美術史学の形成(神林恒道)
- 近代歴史学と作品評価――《御物聖徳太子画像》をめぐって(東野治之)
- 明治期の美術写真出版物――『国華』『真美大観』『Histoire de l'Art du Japon』を中心に(岡塚章子)
U――中国/インド/日本
- 中国絵画の古典性とは?――日本絵画史にとってのそれを中心に(小川裕充)
- 目利きの払底――様式論の凋落と日本仏教美術における過大評価(定金計次)
- 白鳳彫刻の解釈をめぐって――ヨーロッパ的古典主義の恣意(金子啓明)
- 奈良三彩の起源と唐三彩――技術/意匠の系譜について(尾野善裕)
V――画家/作品/価値
- 「これはオランダの最も優れた画家によって描かれたのか?」――「ファン・ロイエン花鳥画」考(中村俊春)
- 謎の絵師・写楽の謎――この可笑しさを描けるのは……(岸 文和)
- 《清姫》考――小林古径の評価をめぐって(加藤類子)
- 切り貼り近代日本画(前)史――日本画壇の三つの不幸(宮島新一)
〈資料紹介〉
- 勝興寺所蔵絵画(原口志津子)
- 須磨弥吉郎と中国近代絵画(西上 実)
〈美術随想〉
- 私が接した一故人の憶い出――教育学者下程勇吉氏から学んだもの(富山秀男)
〈トピックス〉