特集:越境する美術史学
これまでの美術史学における欠如は何であり、そして何であったのか。美術史学がこれまで問うことのなかった新しい問題を提起し、その問題を新しい方法で究明すること、またこれまで研究対象として扱わなかったモノを〈越境〉をキーワードとして検証を試みる。(まとめ=岸文和)
T――美術史学/美術行政/展覧会と〈越境〉
- 美術史の多様性と非連続性(柏木 博)
- 歴史的思考――美術史学における〈越境〉をめぐる走り書き的覚書(北澤憲昭)
- 美術史の「境界」雑感(島尾 新)
- 越境する学術:20世紀前半の東アジアの遺跡保存政策――帝国主義的状況下の美術史学、建築史学、考古学(稲賀繁美)
- 「文化財」の理念的背景――何を守り、なおすのか(佐藤道信)
- 展覧会は美術を越境するか? (矢島 新)
- 展覧会をめぐる江戸美術と〈越境〉(今橋理子)
- 美術館とファッション展(深井晃子)
- 「美術史学」とは関係なく「越境」する私(山下裕二)
- ジャンル概念と境界芸術(山岡泰造)
U――視覚文化研究(ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ)の可能性
- 魔除けのメディア学――白沢王の絵はいかにして鬼を鎮めることができるか(岸 文和)
- 早春に始まる屏風絵(永田雄次郎)/耳鳥齋 ある忘れられた戯画作者(中谷伸生)
- 浅井忠と「日本画」――日本の伝統美術への眼差し(クリストフ・マルケ)
- 版画を超えて――近代日本版画史考(桑原規子)
- 柳宗悦とアーツ・アンド・クラフツ(藤田治彦)
- 柳宗悦と「民藝」――「工藝自体Craft-in-Itself」の思想(土田真紀)
- 染色文化史の夢と嘘――言説された/描かれた染色のオーセンティシティ(小山弓弦葉)
- ハインリッヒ・キューン――ウィーン分離派からフォト・セセッションへ(蔦谷典子)
- デジタル時代の映像論を求めて――レフ・マノヴィッチの「ニューメディア言語論」を手掛かりに(伊奈新祐)
- 建築における絵画の意味(中川 理)
- 建築という見世物、都市という祝祭空間(橋爪紳也)
- 「20世紀の日本美術」雑感――特に民族的、工芸図案的、日常的について(原田平作)
〈資料紹介〉
- 光琳の焼け屏風(河野元昭)
- 富岡鉄斎模写《従吉野山至大峰山・玉置山図》(奥田素子)
- 日本のクラフト 半世紀の歩み(吉村良夫)
〈展覧会評〉
- 光のノスタルヂア――小関庄太郎と日本の芸術写真(宮本高明)
- 江戸の異国趣味――南蘋風大流行(佐藤康宏)
- 横山大観 その心と芸術展――私感(金原宏行)
- 新しい神話のはじまり――没後五〇〇年 特別展「雪舟」(並木誠士)
〈書評〉
- 岡田温司編『カラヴァッジョ鑑』(小野迪孝)
- 天野知香『装飾/芸術――19−20世紀のフランスにおける「芸術」の位相』(小川知子)
- 東浩紀『動物化するポストモダン――オタクから見た日本社会』(吉岡 洋)
〈現代作家紹介〉
- 許?の世界――韓国の白と「可變意識」シリーズ(神林恒道)
- グリンプス 現代美術(福田徳樹)
- 「アート」論序説――境界線上の新しい日本の美術(森村泰昌)