特集:挑戦する美術
20世紀においては芸術の自律性が意識され、美術の純粋性が主張された。そのため、ともすると美術は何かの目的の手段であったり、何かに使われたりすることをきらうようなことがあったかもしれないが、作家が望むと望まざるとにかかわらず、美術はあらかじめ戦略性をもつように呪われていたともいえる。(まとめ=狩野博幸)
〈日本・中国〉
- 宮廷服飾調度の志向に関する考察――奈良平安時代の服飾調度の展開(猪熊兼樹)
- 嵯峨天皇の中国趣味と鉛釉陶器生産工人の挑戦(尾野善裕)
- 中国仕女図に見る官能表現への挑戦(古田真一)
- 苦悩か、捲土重来か――光琳の江戸生活を考える(玉蟲敏子)
- 春卜の挑戦――『画本手鑑』が語る室町時代の画家たち(太田孝彦)
- 戦略としてのアナクロニズム――明末奇想派と曾我蕭白(佐藤康宏)
- 北斎はいかにして神仏と交信したか――絵馬の絵画行為論(岸 文和)
- “戦略”としての文化――「型」と「形」の日本美術(吉田俊英)
- 発酵するイコン――かくれキリシタン聖画考(宮下規久朗)
- 浅井忠の風俗画 巴里と京都(前川公秀)
- 土田麦僊の戦略――帝展との関係を中心に(上薗四郎)
- 国際公募展と現代陶芸(榎本 徹)
〈ヨーロッパ〉
- デス・マスクあるいはライフ・マスク――《ニッコロ・ダ・ウッツァーノ》胸像とドナテッロ(喜多村明里)
- オノレ・ドーミエ《共和国像》をめぐって――「挑戦する?美術」(鈴木杜幾子)
- ブルジョワ藝術への挑戦 戦争画の没落とモダニズム批評言説の形成――十九世紀後半のフランスを例に(稲賀繁美)
〈資料紹介〉
- 善徳寺虫干法会と所蔵絵画(原口志津子)
- 青森県立美術館(仮称)とマルク・シャガールのバレエ「アレコ」の舞台背景画(高橋しげみ)
〈美術随想〉
- 宝山寺の弥勒菩薩画像――現ならぬぞあはれなる(平田 寛)
〈トピックス〉
- 評価はだれのものか(高野清見)
- 今日において美術館博物館を活性化させるための諸問題(原田平作)
〈展覧会評〉
- 円山応挙による円山派の粉本の創作と活用――「特別展 円山応挙――〈写生画〉創造への挑戦」(木村重圭)
- 「ご苦労なこと」でした――「岸田劉生・麗子展」(篠 雅廣)
- 劉生と京都――「内なる美」を求めて(萬木康博)
〈書評〉
- マルコム・バーナード『アート、デザイン、ヴィジュアル・カルチャー――社会を読み解く方法論』(佐藤守弘)
- 安藤佳香『仏教荘厳の研究――グプタ式唐草の東伝』(島田 明)
- 古原宏伸『中国画論の研究』(河野道房)
- 福本繁樹編著『21世紀は工芸がおもしろい』(太田喬夫)
〈現代作家紹介〉
- ものとあいだ――石田有作 白磁の“身振り”(井面信行)
- 美術家としての磯崎新(菅 章)
- 児玉太一と遅れのラジカル――「はっぴいえんど」を聴きながら(島本 浣)
- 宮島達男――ホスピスとアート(岡林 洋)