大坂画壇はなぜ忘れられたのか――岡倉天心から東アジア美術史の構想へ
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中谷伸生著
大坂画壇はなぜ忘れられたのか――岡倉天心から東アジア美術史の構想へ
定価 本体9,500円+税
B5判/上製/総頁630頁
ISBN978-4-925185-39-4
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内容紹介
忘れられた大坂画壇の再評価/岡倉天心の思想を踏まえた東アジア美術史の構想/近代美術史の学問的意味/そして美術史学とは何か。狩野派、四條派、文人画派、近代美術など/多数の未発表作品の紹介による近世・近代絵画史論。
目次
序章 大坂画壇から東アジア美術史の構想へ
- 第一節 岡倉天心による評価をめぐって
- 第二節 近世近代の大坂画壇についての評価
- 第三節 大坂の文人画と中国絵画
- 第四節 大坂の長崎派についての再検討
- 第五節 大坂画壇から東アジア美術史の構想へ
第一部 岡倉天心と日本美術史――狩野派から四條派へ
第一章 岡倉天心が評価したもの・しなかったもの――江戸狩野と大坂の文人画
- 第一節 天心の『日本美術史』と近世絵画の評価
- 第二節 狩野栄川院典信と江戸時代の狩野派についての評価
- 第三節 大坂の文人画家、岡田半江とその周辺
- 第四節 東アジア美術史としての価値評価へ
第二章 狩野典信筆《山水・麒麟図》及び《竹林七賢図》――妙心寺聖澤院書院障壁画
- 第一節 聖澤院書院の障壁画
- 第二節 狩野栄川院典信の画業
- 第三節 《山水・麒麟図》及び《竹林七賢図》
- 第四節 伝周信筆《応神天皇を抱く武内宿禰》と古信筆《鯨図》
- 第五節 典信がめざしたもの
第三章 狩野常信の工房制作と京都――妙心寺退蔵院・養源院・大心院障壁画残欠
- 第一節 江戸から運ばれた《唐獅子図》
- 第二節 常信工房の常棟、常俊、常梅(カ)
- 第三節 伝鶴沢探鯨の大心院襖絵残欠
- 第四節 妙心寺における江戸狩野と京狩野
第四章 狩野永岳と京狩野
- 第一節 狩野永岳はなぜ無視されたのか?
- 第二節 伝狩野永岳筆《文王呂尚図》――春光院障壁画の連続画面構成
- 第三節 妙心寺退蔵院の伝永岳による襖絵残欠
- 第四節 妙心寺金台寺の伝永岳の障壁画
- 第五節 景山洞玉、狩野永泰、冷泉為恭
第五章 江戸の絵画における主題と技法の戦略
- 第一節 忠魂の絵師と《長篠合戦図》――浮田一宸フ生と死
- 第二節 点描の東西――大雅・スーラとその周辺
- 第三節 永井重良筆八幡神応寺の頂相
第六章 江戸から近代へ――写生派の光芒
- 第一節 土方稲嶺筆春光院書院障壁画《武陵桃源図》
- 第二節 田中日華《韃靼人狩猟図屏風》
- 第三節 横山清暉《蘭亭曲水・舟遊図屏風》
- 第四節 柴田是真の大雄院障壁画《郭子儀図》
- 第五節 東アジアの本草学と博物学の美術史的一考察――大口金谷編『爾雅釈草図』(関西大学図書館蔵)について
第二部 大坂画壇の研究
第七章 大岡春卜と大坂画壇の成立
- 第一節 狩野派門人、春卜の風貌
- 第二節 《浪花及澱川沿岸名勝図巻》
- 第三節 春卜編集の絵手本
- 第四節 春トの門人たち
- 第五節 春卜の作風に流れるもの
第八章 木村蒹葭堂と大坂画壇
- 第一節 蒹葭堂と大坂の画家たち
- 第二節 葛蛇玉筆《山高水長図》と大坂の南蘋派
第九章 日本の文人画と東アジア
- 第一節「文人画」か「南画」か、をめぐる論争
- 第二節 文人画とは何か――岡田半江《山水図巻(大川納涼図)》
第十章 耳鳥齋、ある忘れられた戯画作者
- 第一節 鳥羽絵と大坂の戯画
- 第二節 耳鳥齋の真贋について
- 第三節 耳鳥齋筆《別世界巻》
- 第四節 耳鳥齋、美術と漫画から除外された戯画
第十一章 大坂の写生派――中井藍江と上田耕夫
- 第一節 中井藍江筆《槇檜群鹿図屏風》及び《飲中八仙図》
- 第二節 上田耕夫――呉春・蕪村を敬愛した大坂の四條派
- 第三節 小結――資料紹介の意義について
第十二章 近代大阪の絵画と東アジア
- 第一節 《きつねよめいりの巻》――菅楯彦、奥谷秋石、阪正臣、山本行範による合作
- 第二節 大阪の文人画家、矢野橋村――『青飛白走帖』に見られる東アジアの文人趣味
第三部 近代絵画の諸問題
第十三章 キュビスムへの抵抗――一九一七・一八年の萬鐵五郎
- 第一節 『鉄人独語』――画家の言葉と形象
- 第二節 キュビスムと裸婦
- 第三節 ピカソのキュビスムと萬
- 第四節 土沢の風景と萬鐵五郎
- 第五節 文人画と表現主義
- 第六節 キュビスムへの抵抗
第十四章 関根正二の絵画における宗教的気分
- 第一節 同時代批評が見た関根正二
- 第二節 西洋美術との出会い
- 第三節 河野通勢との邂逅
- 第四節 狂気の画家、関根正二
- 第五節 宗教的気分について
第十五章 大正八年における村上華岳
- 第一節 華岳の《日高河清姫図》の謎めいた雰囲気
- 第二節 《日高河清姫図》に対する同時代批評
- 第三節 《日高河清姫図》を読む
- 第四節 大正八年における華岳の言葉と絵画
- 第五節 煩悩を象徴する絵画
- 第六節 結び
第十六章 近代の文人画と洋画
- 第一節 富岡鐵齋筆妙心寺聖澤院書院障壁画《巖栖谷飲図》
- 第二節 富田溪仙《香椎・箱崎屏風》
- 第三節 村上華岳『畫論』と大正期の精神
- 第四節 大正末期の中村彝
- 第五節 関根正二の《死を思ふ日》
第十七章 大正期における日本画の下絵――宇田荻邨の大下絵を中心に
- 第一節 本画と大下絵
- 第二節 大正期における荻邨の大下絵
- 第三節 昭和期における荻邨の大下絵
- 第四節 大下絵の評価をめぐって
- 第五節 大下絵とは何か
第十八章 東アジアの二十世紀美術
- 第一節 一九三〇年代の日本画と台湾の画家陳進――植民地支配のイデオロギーと美術
- 第二節 鏑木清方の評価をめぐって――大正期の実験模索から昭和へ
- 第三節 菅原布寿史――東アジアの源泉から蘇る現代の意匠
第十九章 美術批評――第二次世界大戦後の美術
- 第一節 森芳雄《ある知らせ》――渡部菊郎追悼
- 第二節 足代義郎論――「生」の人形と鮮烈な色彩を求めて
- 第三節 E・ルーシー=スミスの美術批評と日本及びスペイン――一九四五年以後の現代美術をめぐって
終章 近世近代絵画史研究とその方法――美術史学とは何か
- 第一節 近世絵画と大坂画壇の評価をめぐって
- 第二節 大坂画壇の評価と岡倉天心
- 第三節 美術史学とは何か
- 第四節 さまざまな美術史的立場
- 第五節 近世近代絵画の特質とその研究
結び
あとがき
初出一覧
索引